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WN-DAX3600XR マルチキャスト変換

WN-DAX3600XRの設定に、マルチキャスト変換という項目があります。

期待通りの動作であるか、キャプチャして確認しましたのでまとめておきます。

マルチキャスト変換とは

無線LANにマルチキャストを流さないように、ユニキャストに変換する機能です。

無線LANのマルチキャストは無線LANの全クライアントが、受信できる速度で流す必要があります。
その速度は低速であるため、時間を多く占有してしまい、無線LAN全体の速度を低下させてしまいます。

そこで高速であるユニキャストに変換し、各クライアントに送信することで、無線LAN全体の速度低下を防止します。
また、ユニキャストでは、無線フレームでエラーが発生した場合、フレームを再送するため、データを正しく受け取ることができます。

しかし、クライアント数が多くなると、逆に無線LAN全体の速度が低下する可能性があります。
それは、クライアント数分のユニキャストフレームを順番に送信する必要があるためです。
このため一度に送信できるマルチキャストよりも、無線占有時間が増えてしまう恐れがあるのです。

推奨設定

KUSONEKOとしては、マルチキャスト変換はオン(有効)が良いと考えています。

一般家庭で使う分には、無線クライアントが少ない事とマルチキャストの通信が少ないためです。
また、余計なマルチキャストを無線に流さない動作になるため、無線LAN全体の速度を低下を防止できます。

マルチキャストが使われる事例として、ひかりTVが挙げられます。
我が家にひかりTVが無いため、詳しい通信内容は分かりませんが、ユニキャストに変換した方が無線LAN全体の速度の低下を防ぐのはもちろん、無線フレームエラーが発生した場合に再送が行われるため、画面の乱れや音声の飛びが起こりにくくなると思われます。

逆に、問題が発生すると思われるのは、DLNAやSSDPなどで無線側の機器を発見する必要がある場合です。
これはAPの実装に関わりますが、問答無用にマルチキャストを変換して全クライアントに流すか、マルチキャストグループに参加(IGMP Join)したクライアントだけに流すかによって変わると思われます。
前者の場合は機器を発見できると思われますが、後者の場合は予め機器からIGMPが出ていない場合は発見できないでしょう。(DLNA機器はおそらくIGMPが実装されているため発見できると思われる)

ちなみにWN-DAX3600XRでは後述の通り、IGMP Joinがあるとマルチキャストをユニキャストに変換して無線に流れてくるようになります。

動作確認

まず、WN-DAX3600XRでは、マルチキャスト変換をオンとオフの設定が可能ですが、それぞれの動作の違いが見られませんでした。
常にオンの状態になっていると思われます。
この状態で動作確認を行います。

環境

環境は以下の図の通りです。

マルチキャスト変換 環境

WN-DAX3600XRに有線LANで接続したマルチキャスト送信機からマルチキャストを送信し、無線LANで接続したマルチキャスト受信機でマルチキャストを受信をします。

マルチキャストの送受信には、VLCメディアプレイヤーを使用しました。
また、無線フレームをキャプチャするため、無線キャプチャ装置も用意しています。

マルチキャストを送信

マルチキャスト送信機からマルチキャストを送信した状態で、無線キャプチャをしてみました。

結果は、無線LAN側には何も流れてきませんでした。
WN-DAX3600XRは、IGMPに対応しており、無線側からIGMP Joinが来ない場合は、無線側に流さないようです。

マルチキャスト送信

IGMP Joinを送信

ここでマルチキャスト受信機から、IGMP Join(Membership Report)を送信させます。

IGMP Join送信

すると、ユニキャスト変換されたパケットが流れてくるようになりました。
期待通りの動作です。

ユニキャスト変換

常に流れるマルチキャストアドレス

例外的に、IGMP/MLD Joinを出さなくても無線LANに流れてくるマルチキャストアドレスがあります。

IPv4では、224.0.0.1(All Systems on this Subnet)で、
IPv6では、FF02::1(All Nodes Address)です。

これらは全てのノードが受信する必要があるアドレスなので、常に流れてくるようです。

最後に

マルチキャスト変換の動作を確認しました。

機能としては、ただマルチキャストを変換するだけではなく、IGMP/MLDスヌーピングも行わなければならない高度な物でした。

ひかりTVを使っていない場合、一般家庭ではあまり意味の無い機能かもしれません。
ただ、マルチキャスト変換に対応しているAPは、余計なマルチキャストを無線LAN側に流さない実装となっている可能性が高いため、無線LAN全体の速度を低下させません。

無線LAN APを選ぶ場合はなるべく機能が多い物を選ぶ方がよいと思います。

企業ユーザーでは、冗長化プロトコル(HSRP/VRRP)が無線LANに流れないようになるため、メリットと言えると思います。


WN-DAX3600XR購入時の記事はこちら。

10GbE 2ポート搭載 Wi-Fi 6 無線LANルータ WN-DAX3600XR を買ってみた

10GbE 2ポートとWi-Fi 6を備えた I-O DATA WN-DAX3600XRを購入しました。初期設定、有線・無線LANの速度測定や問題点・ハマりポイントを記載しました。

関連記事はこちら。

Wi-Fiルータ推奨設定 13 「マルチキャスト伝送速度(Mbps)」

マルチキャスト伝送速度の設定とは何なのか、どのような場合にどの値にすれば良いかを書いてみました。

匿名2022年8月5日 10:02

初めまして、無線LANでマルチキャストを流すことを検討していますが、マルチキャスト受信端末についてご質問が有ります。


無線LAN側でマルチキャストをユニキャストに変換し端末側に送信した場合、端末側はマルチキャストを受信する状態だと思いますが、ユニキャストを受信できるのでしょうか?
受信端末側で何か特別な処理を行っているのでしょうか?

よろしくお願いいたします。

KUSONEKO2022年8月5日 11:08

コメントありがとうございます。

マルチキャスト変換が行われるのは、無線LANフレーム(レイヤー2)です。
宛先IPアドレスはマルチキャストアドレスのままで、UDPのポート番号もそのままですので、アプリケーションでは問題なく受け取れていると思われます。