我が家のデスクトップPCとサーバが2.5GbEなので、2.5GbE以上のLANポートを2ポート以上搭載する無線LANルータ(AP機能だけでも良い)を探していました。
しかし、その条件にあった物は、法人向けを探しても中々ありません。
そんな中、Amazonのクーポンで割引になっているWN-DAX3600XRを見つけました。
WN-DAX3600XRは、インターネット側の10GbEと、LAN側の10GbEの計2ポート持った製品でした。
両方ともLANでは無いため、ノーマークでしたが、ファームウェアアップデートでAPモードに対応し、10G 2ポートがLANで使えそうだったため購入してみることにしました。
(最悪、できなくてサーバを別セグメントにすれば良いとも思っていました。)
結果的に、両方の10GをLANで使うことはできますが、若干癖があることも分かりました。
インターネット上にもあまり情報が無いため、調査の結果を載せておきます。
スペック
概要だけ記載しておきます。
- 10GbE インターネットポート x1 (APモードでLANに変更可)
- 10GbE LANポート x1
- 1GbE LANポート x4
- Wi-Fi 6 最大2402Mbps (80MHz 4ストリーム、160MHz 2ストリーム)
なぜか160MHzでは、4ストリームに対応していないようです。
開封
本体と添付品は以下の通り。
10G対応LANケーブルが付いていますが、結構硬いケーブルです。取り回しが効かないので、別途ケーブルを買った方が良いです。
私は、爪が折れないタイプかつブーツ付きのこれを購入しました。
本体のサイズは大きいと感じました。
今まで使っていたNEC AtermWG1800HPと比べると、こんなに違います。
初期設定
接続とログイン
LANケーブルは繋がず、無線LANで設定をしました。
まずスマートフォンで、WN-DAX3600XRの初期設定のSSIDに接続します。
SSIDの設定などは、手打ちする必要がなく、付属のQRコードを読み込むだけで、接続できるため楽です。
初期IPである192.168.0.1にブラウザでログインします。
ユーザ名とパスワードは、本体に書いてあります。
[システム設定]の[デバイス情報]では、ファームウェアのバージョンが確認できます。
APモードに対応の2.00.00でした。
IPを設定
WN-DAX3600XRのIPを設定します。
IPの設定場所が分かりにくいのですが、[LAN設定]の[DHCPサーバー]で指定をします。
IPアドレスの部分がWN-DAX3600XRのIPになります。
DHCPサーバは別に存在するため、オフにしました。
I-O DATAはサブネットマスク固定が好きな気がします。
ファームウェア更新
予め、PCで最新ファームウェアを落としておきます。
https://www.iodata.jp/lib/software/w/2242.htm
ダウンロードしたファイルを解凍し、『wndax3600xr_v210.bin』というファイルを準備しておきます。
自宅LANに、WN-DAX3600XRを接続し、PCからログインします。
[システム設定]の[ファームウェア]で、ファイルを選択し、[アップグレード]をクリックします。
しばらくすると、アップグレードが終わり、画面更新ができるようになります。
最新ファームウェアに変更できました。
APモードに変更
ここにQ&Aがあり、APモードになっていることを確認する内容はありますが、APモードに変更する手順が載っていない気が…。
https://www.iodata.jp/support/qanda/answer/s30872.htm
[インターネット]→[WAN接続]→[インターネット接続]で、[APモード]に変更します。
が、ここでハマりました。
何分待っても、ログインできませんでした。
IPが変わってしまったことを疑い、Magical Finderを使っても、IPアドレスが検出できません。
仕方なく、パケットキャプチャをすると、WN-DAX3600XRからDHCP Discoverが出ていました。
なるほどAPモードにするとIP自動取得に変わる訳ねと、思いましたが、既存DHCPサーバからDHCP Offerが出ているのにIPを取得しない。
色々やっている内に、10Gインターネットポートを接続しないと、IPを取得できないことが分かりました。(なんて仕様なんだ…)
ひとまず、10GインターネットポートをLANに接続し、IPを取得できたため、ログインし、IPを固定にしておきます。
[LAN設定]の[IPアドレス設定]から可能です。
速度測定
iperf3 を使用して、速度を測定してみました。
コネクション数(-Pオプション)は、基本1ですが場合により変えています。
各クライアントからサーバへの送信と受信を5回実施しています。
無線LANは、160MHz設定の結果を記載しています。
80MHz設定でも測定しましたが、あまり変わらなかったため省略します。
10G インターネットポート ⇔ 10G LANポート (2.5GbEで測定)
デスクトップPCとサーバの間で測定しますが、双方とも2.5GbEのためリンク速度は2.5Gとなります。
送信 | 受信 | |
---|---|---|
1回目 | 1,040 | 1,500 |
2回目 | 1,050 | 1,670 |
3回目 | 1,050 | 1,530 |
4回目 | 1,060 | 1,520 |
5回目 | 1,050 | 1,580 |
平均 | 1,050 | 1,560 |
直繋ぎの時に比べ、大分遅くなってしまいました。
遅延があるのではないかと思い、Pingで遅延を測定してみると。
|
直繋ぎ | AtermWG1800HP | WN-DAX3600XR |
---|---|---|---|
1回目 | 0.564 | 0.515 | 1.493 |
2回目 | 0.331 | 0.670 | 1.281 |
3回目 | 0.442 | 0.701 | 1.848 |
4回目 | 0.552 | 0.620 | 1.238 |
平均 | 0.472 | 0.627 | 1.465 |
WN-DAX3600XRは遅延が大きいため、速度が出ないものと思われます。
iperf3のオプションで、コネクション数を増やす(-P 2)とまぁまぁの結果です。
送信 | 受信 | |
---|---|---|
1回目 | 1,700 | 1,740 |
2回目 | 1,700 | 1,940 |
3回目 | 1,680 | 2,090 |
4回目 | 1,670 | 1,870 |
5回目 | 1,710 | 2,000 |
平均 | 1,692 | 1,928 |
この遅延何とかならないでしょうか。
Wi-Fi 6 PC Intel AX200
今度は、無線LAN側の測定です。
このAX200は、160MHzに対応しています。
Windows 11
1コネクションでは、200Mbps程度だったため、5コネクションで測定することにしました。
送信 | 受信 | |
---|---|---|
1回目 | 595 | 674 |
2回目 | 484 | 676 |
3回目 | 496 | 681 |
4回目 | 426 | 620 |
5回目 | 616 | 623 |
平均 | 523.4 | 654.8 |
Ubuntu
後述のiPhone 12 Proに比べ、Windows 11が遅かったため、デュアルブートしているUbuntuの方でも測定してみました。
送信 | 受信 | |
---|---|---|
1回目 | 498 | 877 |
2回目 | 539 | 885 |
3回目 | 459 | 682 |
4回目 | 563 | 842 |
5回目 | 630 | 726 |
平均 | 537.8 | 802.4 |
1コネクションでも速度が出ました。
OSのTCPの実装差が影響するのかもしれません。
ですが、理論値2,402Mbpsには遠いです。
我が家の環境が影響しているのかもしれません。
Wi-Fi 6 iPhone 12 Pro
iPhone 12 や 13は、Wi-Fi 6 80MHzまで対応しています。
送信 | 受信 | |
---|---|---|
1回目 | 609 | 894 |
2回目 | 716 | 727 |
3回目 | 607 | 688 |
4回目 | 687 | 809 |
5回目 | 709 | 829 |
平均 | 665.6 | 789.4 |
理論値1,201Mbpsに対して、この結果であれば良好です。
問題点
NATアクセラレータ(ハードウェアNAT)の影響
非APモードの時に存在するメニューに『NATアクセラレータを有効にする』があります。
本来、NATを高速化するための機能ですが、これが無効になっていると、LAN内の通信速度が遅くなります。
APモードの時には、メニューが存在しないにも関わらず、この設定が影響します。
デフォルトは有効なので、触らずにAPモードに変更していれば問題ありません。
LANの通信速度が、1コネクションで600Mbps程度で頭打ちになっている方は、一度確認した方が良いでしょう。
スイッチングハブの遅延
速度測定結果で触れましたが、スイッチングが遅いです。
LAN内のPingで、1.5msの遅延があります。
ハード処理ではなく、ソフトウェア処理なのだと思われます。
前述のNATアクセラレータを有効にすると、通信速度が上がりますが、遅延については変わりません。
これが一番残念なポイントです。
ストリーム数について
Beaconの内容をキャプチャしてみました。
Beaconには、BSSの情報が色々と載っています。
VHT Capabilites内のVHT Supported MCS Setを見ると、ストリーム数が確認できます。
以下の通り、80MHzでは4ストリーム、160MHzでは2ストリームなのは間違い無いようです。
※SS : Spatial Stream (空間ストリーム)
4ストリーム対応のクライアントでは、160MHzに設定すると、2ストリームしか使えなくなってしまうため注意が必要です。
同じ2,402Mbpsでも、80MHz 4ストリームの方が安定するはずです。
最後に
癖はありますが、10GbEがLANで2ポート使えるWi-Fi 6 ルータは貴重です。
スイッチングの遅延はありますが、有線・無線LANからNASへの一斉アクセスなどの多重通信が前提であれば、そこまで速度への影響が無いものと思われます。
我が家の環境が2.5GbEという事もあり少し残念な結果でしたが、10GbEであればもっといい結果が出るはずです。
無線に関しては、近所の無線APの少ない我が家でも、160MHzの恩恵は受けられませんでした。
逆に干渉が増えますし、速度が変わらないのであれば、80MHzで運用するのが良いでしょう。
80MHzでも4ストリーム対応のクライアントがあれば、2,402Mbpsも狙えます。
2.5/5/10GbEとWi-Fi 6を1台で使いたい方は、チェックしてみると良いでしょう。